最近の幼稚園では、九九を暗唱することなどもあるようです。
例えば、「2×4は?」と質問すると、子どもは九九を思い浮かべて「8」と答えます。しかし、ここで重要なのは、2×4の意味を本当に理解しているかどうかです。
たとえば、縦2マス、横4マスにどんぐりが並んでいる様子や、2人の子どもが1人当たり4つのあめをもらっている場面をイメージできるなら問題ありません。しかし、そういった具体的なイメージを飛ばして、ただ九九を順番に暗唱して答えを導き出しているだけなら、これは問題です。
本当の意味を理解せず、ただ答えを求めるだけ。
これは公式を与えられて、それに当てはめるだけの「公式適用マシーン」を育てているのと同じです。公式の使い方はうまくなるかもしれませんが、そこから広がる世界や深い理解を感じ取ることはできません。
公式とは、本来複雑なルートを辿らなければならないところに用意された近道のようなものです。
(二次方程式の解の公式などがまさにその例ですね。)
人間は、楽なルートがあれば無意識にそれを選ぼうとします。勉強においても同じで、脳が疲れる状況を避けられるのであれば、考えずに答えを導き出す楽な道を選んでしまうでしょう。その結果、公式を当てはめるだけのマシーンが育ち、脳を使わずに答えを出すようになります。しかし、その状態で解ける入試問題はそう多くありません。
質の高い入試問題では、解き方が複数用意されていることがよくあります。(京都大学の数学の問題などは、複数の解法が存在するものが多いです。)
これらの問題は、「頭で試行錯誤しているか」「どのアプローチが最適か」を判断する力を問うものです。塾講師としては、最終的にこうした問題を解けるように指導したいのですが、楽な道が無意識に用意されてしまうと非常に困ります。それは考える癖の放棄を意味し、伸びしろを奪ってしまうことにもなりかねません。
こうした問題を解けるようになるためには、日頃から「なぜ?」を考え続ける癖をつけることが必要です。しかし、一度楽を覚えてしまうと、元に戻るのは難しいものです。
幼稚園の段階で「考えない」癖がついてしまうのは非常に厄介です。指導者がどれだけ意識して子どもたちに接するかが、非常に重要だと改めて感じました。