笑顔の循環

塾の目的とは何なのか。

一般的には「成績を上げること」だと言われるだろう。

もちろんそれは大事だ。

ただ、成績を上げるのは生徒自身であり、主語に「塾が」とくる言い方は難しい。

成績というものは、実はさまざまなものと結びついている。

生活習慣、授業の受け方、他人への態度、趣味、家庭での会話……。

それらすべてが影響し合って、その子の学力という形で現れてくる。

だから“成績が中心”にあるわけではない。

その子にとっての中心がどこにあるかは、家庭の価値観や育ってきた環境によってまったく違う。

僕の知り合いは、親から「勉強ばかりする子なんて可愛げがない」と言われたことがあるらしい。

僕自身も、中学受験に失敗したときに、母に激しく怒鳴られた記憶がある。

親と子どもで、何を大切にするのかが食い違うことは珍しくない。

それでも、僕は授業をするとき“成績”を軸に置く。

生徒が良い点を取って嬉しそうな顔を見せてくれると、こちらまで嬉しくなる。

その姿を見て保護者の方が喜んでくれる。

その循環が好きだし、そこにこの仕事の価値があると思っている。

だからこそ、成績が出ず、生徒が苦しそうな表情になると、本当に胸が痛い。

悔しさがこみ上げ、夜中に何度も思い返して眠れなくなることもある。

すべての試合に勝つことがとても難しいことなのはわかっている。

それでも、できる限り勝たせてあげたい。

生徒と保護者と僕、その三者が同時に笑顔になれる瞬間をつくりたい。

今でも忘れられない出来事がある。

この仕事を本格的に始めて2年目のことだ。

なかなか点が伸びない子がいて、何度も補習をし、横につきながら一緒に問題に向き合った。

テスト返却の日、その子は真っ先に塾へ来て、答案を僕に差し出してくれた。

そのあとの面談で、お母さまも心からの笑顔を見せてくれた。

あの瞬間、自分の仕事にはじめて強い価値と誇りを心から感じた。

今、あの循環をどれだけ生み出せているだろうか。

指導が厳しいときもあるかもしれない、甘いときもあるかもしれない。

あと一歩足りないと思うときもある。

多く進みすぎたと思うこともある。

楽しいことばかりでなく、悔しいことや悲しいこともある。

それでも立ち止まらず、目の前の一歩を進んでいく。